あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

「桜、…大丈夫か?驚いただろ。」

「はい…とても明るくて、ユニークだけれど、楽しくて素敵なご家族ですね。」


実は、悠斗さんのご両親の明るさには、理由があったようだ。
お義父さんは、微笑を浮べながら話してくれたのだ。


「悠斗が小さい頃、私は俗に言う商社マンとして世界を飛ぼまわるような仕事をしていたんだ。その上、母親もピアニストで家を空けることが多かったんだ。」


お義母さんも一緒に頷きながら話を聞いている。
さらに、お義父さんは話を続けた。


「悠斗には、だいぶ寂しい思いをさせてしまった。それなのに、悠斗は文句も言わずに妹の面倒も見る優しい子だった。しかし、悠斗は祖父母に育てられていたため、祖父母が亡くなってからは、ショックで引きこもるようになってしまったんだ。」


悠斗さんが、引きこもりなんて想像もつかない。
驚きで私は言葉も出なくなった。


「その時になってやっと私達夫婦は気が付いたんだ。悠斗にどれだけ寂しい思いをさせていたかと…そして私達は話し合い、思い切って仕事を止める決断をしたんだ。郊外の長閑な土地で自給自足のスローライフを始めることにしたんだ。」


それまで何も言わなかった悠斗さんが口を開いた。


「そのお陰で俺はすっかり元気になったんだ。両親の決断には感謝しているよ。その頃から両親は飛び切り明るくなって、毎日笑顔の家族になったんだ。でも俺が就職して家を出ると、今度は父さん達が第二の人生とか言って、今ではハワイで仕事を始めていて、たまに日本に帰って来るんだけど、以前よりさらに明るくなって、いつも驚かされるんだよ。」


とても素敵なご両親だった。
悠斗さんと家族になれることが、とても幸せに感じる。


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