あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

…それから半年後

私は朝早くから髪を巻き、以前にホテルに駆けつけてくれた、メイクアップアーチストのヒロがメイクをしてくれている。

純白のドレスに着替えた私。

そう…今日は悠斗さんと私の結婚式だ。

控室で座っていると、ドアがノックされる音が聞こえて来た。


「…はい。どうぞ」


すると、ゆっくりと扉が開けられ、顔を覗かせたのは、白いタキシードが眩しい悠斗さんだ。
分ってはいたけれど、思った以上にタキシードがしっくりと似合っている。
それはまるで美しい王子様のように見える。


「桜、綺麗すぎてまっすぐ見られないよ。」

「悠斗さんこそ、カッコ良すぎて眩しいです。」


すると、メイクを終えて片付けをしていたヒロが呆れ顔で近づいてきた。


「はいはい…お互いに惚気るのはそのくらいにしてくださいね…熱すぎて、聞いている僕が汗だくになりそうだよ。でも、確かにこうみるとドラマのワンシーンみたいな二人だよな。」


父と腕を組んで教会の入り口に立った。


「桜、綺麗だな…今、こうして腕を組んでいることが夢のようだ。」


考えてみたら、父とこうして腕を組むことは少し前まで考えられない事だったのだ。

すべて、悠斗さんが引き合わせてくれたのだ。

一時は、殺したいほど憎んでいたけれど、その憎しみが無ければ、悠斗さんに近づくことは無かったのだ。憎んでいた期間も、悠斗さんと結ばれるために神様が用意した期間だったように感じる。


教会の中から音楽が鳴り、讃美歌が聞こえて来る。


眩しい光の中、バージンロードを父と腕を組んで進んでいく。


まわりには、母や悠斗さんのご両親、会社の秘書課メンバー須藤さん達の顔が見える。


皆が笑顔で拍手してくれている。


その先には…。


輝く光を浴びて、悠斗さんが優しい笑顔で手を差し伸べてくれている。


人生は本当に不思議だ。
一度は憎んだ人が、最愛の人になる。

もしかしたら、貴方を憎みながらどこかで求めていたのかも知れない。
今は…どうしようもなく愛している。


私は悠斗さんの手を握った。


悠斗さん、何があってもこの手を離さないでね…。
ずっとずっと…愛しています。


その後、分かった事ではあるが、進藤祥子は鳴海裕也と恋人同士になったそうだ。
余りにも近くに居て気が付かなかった二人は、お互いを本当は大切な人だったと気がついたようだ。

さらに、まったく気が付かなかったが、秘書の須藤は、同じ秘書課の深山絵里と同棲中らしい。


皆がそれぞれに幸せに向かって動き始めているようだ。


ずっと、貴方を憎んでいました。
今は、心から愛しています。



END

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