あなたを憎んでいる…でも、どうしようもなく愛してる

「伊織さん、話を聞かせてくれ。」

「…はい。」


本来であれば、須藤には、この会社に復讐のため入社したとは言いたくなかった。
しかし、すべてを打ち明けなければ、社長との関係を逆に怪しまれてしまう。

私は、須藤にどう思われても全てを話すことにした。


「須藤さん、私は神宮寺社長に復讐がしたくて、この会社に入社して近づいたのです。その理由は今から7年前に遡ります。」


私は須藤に、父親が失踪した事、神宮寺を恨んだ事、しかしそれは私の思い違いだった事、すべてを打ち明けた。
そして、神宮寺から言われた偽装恋人の件や、昨日行ったホテルのブリティシュパブでの出来事も伝えた。


「そして、神宮寺社長は、お店を出て先に部屋に行って待っていろと言ったのです。…でも社長は部屋にいらっしゃることはありませんでした。…なので、少しだけ嫌な予感がしていました。」


私の話を黙って聞いていた須藤は、その場で頭を両手で抱え込んだ。
恐らく、私のいろいろな話が、予想外のことばかりで戸惑っているのだろう。

須藤は、頭を抱えて下を向いたまま、声を出した。


「…伊織さん、頭の整理はつかないけど、今は神宮寺社長を探すのが優先だ。…昨日パブで会ったという進藤が怪しいな…娘の祥子も僕はよく知っている。かなり神宮寺社長に付き纏っている女性だろ…まずは、祥子のところに行ってみるか。」


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