貴方の残り香〜君の香りを狂おしいほど求め、恋しく苦しい〜
 ぐったりとして動けない真梨子を抱き上げ、譲は浴室に入る。シャワーだけだと思っていた真梨子は、譲が湯を張ってくれていたことにホッとした。

 やっと落ち着ける……しかし譲はにっこりと不敵な笑みを浮かべると、真梨子を壁際に立たせてキスをする。

「まだダメだよ……」

 真梨子の片足を上げて、再び彼女の中へと入っていく。立っていられず崩れ落ちそうになる真梨子の体を支えながら、譲はキスをやめようとはしない。

 真梨子は息が出来ずに、胸を大きく上下させ、とろんとした瞳で譲を見つめていた。

「……立ったままなんて……もう無理よ……あの頃みたいな体力ないもの……」
「大丈夫。俺に体を預けて……」

 譲の首に腕を回した途端、激しく突き上げられ、真梨子はうっとりと目を閉じた。

* * * *

 湯船に浸かりながら、真梨子は譲の胸に寄りかかっていた。大きく厚い胸板は、真梨子をすっぽりと受け止めてくれる。

「あぁ、真梨子とするのって本当に気持ちいいな……」

 譲の声が浴室の中によく響き、真梨子は小さく笑う。

「それはこっちのセリフよ。あなた一体どれだけの女性を相手にしてきたの?」
「……さぁ、どれだけだと思う?」

 譲の指が胸の頂をいじり始めると、真梨子は体をピクンと震わせる。

「そんなの……知らない……」

 背中に譲の唇が何度も触れ、舌が這っていく。そのたびに真梨子の体が震える。

「……真梨子が離れてから、しばらくは遊びまくったよ。でも……誰も真梨子の代わりにならなかった。だからここ数年は仕事に没頭してたんだ。実を言えば、俺もセックスするのは久しぶり」
「う、嘘つき……」
「嘘じゃないよ。ただ夢の中で、真梨子にあんなことやこんなことをしたかったなっていう想像はしてたけど」

 譲は背後から真梨子の体を強く抱きしめる。

「早く半年経たないかな……」

 首元に吹きかかる譲の息がくすぐったくて、真梨子は身をよじる。

「結婚したら、何も付けずに真梨子の中に入れるだろ? この中で直接触れ合いたい……真梨子を感じたい……」

 譲の手が真梨子の太ももを撫で、足の間に指が滑り込む。

「うん……」

 真梨子の中に譲の指がゆっくりと入っていくと、徐々に呼吸が荒くなっていく。

「んっ……」
「ねぇ真梨子……さっき頷いたよね。それって結婚してもいいってこと?」
「……約束は半年後でしょ? それに離婚したばかりの女を、あなたの家族がなんて思うか……」
「また考え過ぎてる。俺はさ、一度家族の言う結婚をして失敗してるんだ。もう何も言わせない。それに真梨子なら……絶対に大丈夫だよ」

 譲は真梨子を自分の方へ向き直らせると、深く口づける。

 大丈夫って……その自信はどこから来るのかしら。

 譲を信じたい。それでも真梨子は、胸に抱いた一抹の不安を払拭することは出来なかった。

 半年後、私はどうなっているのだろう……。

 
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