西園寺先生は紡木さんに触れたい
「なんかスタンプでも送って。」
西園寺にそう言われて、紡木はちょうど一番上にあった猫のスタンプを送った。
「あは、猫可愛いね。ありがと。」
「いえ、じゃあ。おやすみなさい。」
そう言うと紡木は颯爽とアパートの一室へと消えていった。
その早さに西園寺は思わず苦笑した。
警戒心高…
ちょっと手強いな。
ふう、とため息をつくと西園寺はスマホの画面に視線を戻した。
画面ではデフォルメされた猫が『よろしく!』と手を振っている。
可愛い。
スタンプまでも可愛い。
っていうかこの猫、紡木さんみたい。
西園寺はスタンプをタップして、即購入ボタンを押した。
そして車のアクセルを踏んで家まで走り出した。
『は、はい??さっきからかわいいって、何ですか!』
そう言って真っ赤に顔を染める紡木さんが、西園寺の頭の中に浮かんで、思わず微笑んだ。
可愛いなあ。
紡木さんはいつも可愛い。
あの時だって─
そうして西園寺はとある日の事を回想し始めた。