龍神さまのいるところ

第8話

「私、どうしたらいいのかな」

「一緒に宝玉を探そう。そしてハクをちゃんと見送ろう」

「そ、そうだよね。それが正解だもんね」

「それがきっと、俺たちに出来る、できる限りのことだと思うよ」

 伸ばされた彼女の手を握る。

壁に足をかけた彼女を、思い切り引き上げた。

肩までの髪が揺れ、落ちそうになるのを抱き止める。

俺の腕の中にすっぽりと収まった彼女を、そっと離した。

互いの指先が伸びて、俺たちは手をつなぎ合わせる。

「行こっか」

「うん」

 すっかり暗くなってしまった森の中を、ゆっくり進む。

木々の隙間から見える街の明かりが、俺たちの視界を辛うじて確保していた。

「……。圭吾はさ、私とハクがころころ入れ替わってたの、気づかなかった?」

「うん? まぁ、何となくは……」

 分かってたところもあったし、なかったところもある。

「ゴメン。興味ないよね、こんな話し」

 積もった枯れ葉に足元が滑る。

踏みしめた小枝はポキリと折れる。

「すごく、楽しかったんだ……。どうやってお別れしていいのか、分かんない……」

「笑って『またね』って言えばいいんじゃない? いつものようにさ」

「はは。そんなの、ぜったい無理」

 彼女の足が止まった。

「ヤだよ。やっぱり行きたくない」

 舞香とハクの間にどんな友情があったのか、その過程を俺は知らない。

知らないから、彼女を慰める適切な言葉と対応が思いつかない。

それが俺の間違いだったとか、失敗だったってことが、いまの後悔になっている。

「俺が一緒にいてやるから、大丈夫だよ」

「……。そんなの、信じられない……」

「そうかもしれないけど、とりあえず今は信じてくれる?」

「……どうして急に、そんなふうになったの?」

「俺自身がキミを、気になってるってことに気づいたからだよ」

 裏門側から森の中を、学校の方へ戻るように進んでいる。

木立の間に見える校舎の位置から、そろそろ池の場所が近い。
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