龍神さまのいるところ

第3話

「お? なんだアレ!」

「知らなかったの?」

 舞香はため息をつく。

「もうそれなりに前だと思うよ」

「いつ!」

 彼女は俺をにらみつけた。

「本人たちに直接聞けば? 知らなかったのは、圭吾だけだって。そっちの方がびっくりだよ」

 彼女はベンチから立ち上がると、とことこと歩きだした。

校舎脇に設置されたゴミ箱に飲み終わった紙パックを捨てると、また戻ってきて俺の隣に座る。

「で、圭吾は私とハクの、どっちが好きだったの?」

「だ、だからそれは……。もちろん舞香だって……」

 あれから何度も聞かれている。

毎回同じように答えているのに、どうしたって彼女には納得してもらえない。

「じゃあ、いつのころからそう思ってたワケ?」

「ん? あぁ、それは……。だけどさー。ハクの最後のセリフ、覚えてる?」

「へ? そんなの、もちろん覚えてるよ。絶対に忘れないでしょ」

 うん……。それはそうなんだけどさぁ……。

「舞香と荒木さんの名前は出たのに、俺の名前はなかった……」

「ウソ! そんなことないって」

「薄情すぎない?」

「大丈夫、大丈夫! ハクは覚えてるよ」

「ついでで?」

「ついでで」

 舞香と目を合わせる。

次の瞬間、彼女は大爆笑した。

「あはは、ずっとそれを気にしてたの?」

「もういいよ……」

 ハクが舞香に取り憑いた理由が、何だか最近分かってきた気がする。

舞香は中身まで、ハクとそっくりだ。

「ね、今日はフォトコンを見に行く約束でしょ。早く行こ」

「うん」

 学校をあとにする。

結局俺が選んだのは、舞香とハクを並んで撮した画像だ。

そこには舞香だけしか写っていないけれど、俺と彼女だけは、そこにハクがいたことを知っている。

「特選に入るといいね」

「うん、それはきっと無理……」

 俺たちは歩きだすと、そっと手をつないだ。




【完】
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