龍神さまのいるところ

第7話

「こんなところで寝てて、平気なの?」

「大丈夫なんじゃないかな」

「透明じゃなくても?」

「透けてないってこと? 人によって、時と場合で見え方が違うらしいよ」

「なんだそれ……」

 便利なのか、便利じゃないのか。

「気分にもよるんだって。本人の。宝玉ないから不安定なんだって」

 呼吸に合わせて角が上下し、時折もごもごと口を動かしている。

呑気なもんだ。

「そうえば、どうなったの?」

「なにが?」

「えっと……」

 なにがって、そんなの聞かなくたって分かるだろ。

俺にそれを言わせようってのか? 

パソコンから聞こえてくる演劇部のセリフは、3倍速で流されている。

何度も聞いて知っているはずのセリフなのに、何を言っているのか分からない。

「演劇部の大会用脚本」

「あぁ、部長がこだわってるあれ?」

 彼女の顔に、ようやく笑顔が浮かんだ。

「オリジナルでやりたいからって頑張ってるけど、どうなんだろうねー」

 彼女の手はマウスを動かす。

壇上で続いていた、芝居の一部を切り取った。

別の角度で撮った映像をそこにつなぐ。

彼女に笑顔が戻ったのなら、それが正解だ。

問題ない。

だけど、切り取られてしまったその映像に、俺は覚悟を決めた。

「その脚本、舞香は面白いとは思ってないの?」

「分かんない。面白いとは思うけど、実際他の人からみたらどうかだなんて、分かんないよね」

「……。あのさ……、俺……」

 突然部室の扉が、勢いよく開かれた。

「お疲れー!」

入ってきたのは、希先輩だ。
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