龍神さまのいるところ

第8話

「舞香ちゃん、調子はどう? 上手くいってる?」

「はい。圭吾にもみてもらって……」

 希先輩は首にかけていたカメラを外した。

それをテーブルに置いて……。

「あ、しま……」

「!!」

 人は本当に驚くと、声が出なくなるものらしい。

「ちょ……。ちょ! な……!」

 あぁ、恐れていたことがついに現実になってしまった。

俺は大きくため息をつく。

希先輩の言いたいことは、言えなくても分かる。

すやすやと眠るチビ龍が、希先輩に見えていることは間違いない。

舞香はそんな先輩を見上げた。

「え……。希先輩、ハクが見えるんですか?」

「ハク? ハクってなに?」

 チビはのんびり薄目を開けると、その小さな口で大あくびをした。

「なんだ。お前にも見えるのか」

「え? なに? 二人とも知り合い?」

 希先輩から交互に指をさされ、俺と舞香は顔を見合わせる。

「あぁ、そういうことになるのか」

「知り合い? ……。そっか、知り合いか」

 彼女の指は順番に俺たちを見回す。

「私と、圭吾と、ハクちゃんと」

「ハクちゃん?」

「舞香が名前をつけたの?」

 俺が聞いたら、代わりにチビが答えた。

「舞香が名付けをした。我が名は『ハク』となった」

「ちょっと! なんで今までこんなコト黙ってたのよ!」

「えっ?」

 俺はその声に振り返った。希先輩が身を乗り出す。

「私も混ぜて!」

「いいんですか!」

 舞香の目が、見たこともないくらいキラキラしている。
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