雪の国の恋、とけない魔法
2日目、ゲレンデ、プライベートレッスンなの?

✴︎2日目、ゲレンデへ、プライベートレッスンなの? ✴︎



レッスンは入り口をゲレンデに出て左あたりに集合。
もたもた。
慣れない靴と、重い板とバラバラ落ちそうになるスティック。
「よいしょ、」って声が出てしまう。

花梨の前を、新田さん達3人が「あら〜大変ね〜」と言いながら、さっさと雪に出て行ってカシャッ、カシャッて板をはめた。

シャァ〜と綺麗にあっという間に向こうの方。


結構、悔しい。
誰しも初めての事や苦手な事もあるだろう。
でもみんなみたいに出来ないって落ち込むよ。

さっき。ゲレンデに来る前。
上月さんと話していた時。

『えっ? プライベートなの? 』

って言われた。
パッとこっちを見た上月さんの目。
その時だけ、以前みたいにヒヤリとした。
話しやすくて、共感できて、もっともっとと思ってた気持ち、調子に乗ってたんだ⋯⋯ 。
ヒヤリ。
違うって言われたみたいに、あ、いまいちだったんだ、私、って思った。

プライベートなんて勿体無い、変だった?

『スクールに空きがなくて⋯⋯ 』

って言い訳みたいに呟いた。

上月さんの黒のウエアが見える。
誰よりもカッコよくて、スマートな身のこなし。
板がまるで体の一部みたいに、身についていて、靴の厚みでいつもより背の高い上月さんが、雪の上に出て、いとも簡単にカシャン、カシャン、と板をつけた。
ゴーグルをなおしながらシューと雪に出て、シャァーーーっと進む。
慣れた様子で両足を交互に前に出すように蹴れば、スゥーイ、とあっという間に進み、片側に体重を乗せるようにシャーッと滑って行く。

誰よりも上手だ。
ゲレンデにいる誰よりも素敵だ。
リフトに行く後ろ姿に苦い気持ちがする。


「プライベートの森川さんですかぁ? 」


同じぐらいの年のインストラクターに声をかけられてハッとした。

頭を切り替えて、インストラクターの声に集中する。

< 14 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop