3月15日ーafter whitedayー
「伝わらなすぎだろ。それ渡した時、俺けっこう緊張したぞ」
「…だって」
優絵が腕を下げると、手の中のスマホは膝の上で消灯した。
「おかしいと思って何にも調べなかったお前にびっくりしたわ」
「もらえるだけで嬉しくて」
そうやってあまりにも純粋にお菓子を喜ぶから、下心があるなんて知られたくなくなってしまった。何年も、自分でも訳がわからない拗らせ方をしていたのだ。
伝える気があるのかないのか、よくわからなくなってしまっていた。
「てか、お互い様じゃん」
急に優絵は怒ったようにこちらを見て、思考が中断する。
「弘毅だって、私の本気のチョコに気付いてなかった」
毎年貰う、ちょっと良い箱に入ったチョコレートを思い出す。
色んなフレーバーを貰ったが、どれも同じメーカーだった。
優絵はスマホの画面を手のひらでこすりながら、「あれ、本命に使う子多いんだから」と俯いた。