3月15日ーafter whitedayー

「伝わらなすぎだろ。それ渡した時、俺けっこう緊張したぞ」

「…だって」

優絵が腕を下げると、手の中のスマホは膝の上で消灯した。

「おかしいと思って何にも調べなかったお前にびっくりしたわ」

「もらえるだけで嬉しくて」

そうやってあまりにも純粋にお菓子を喜ぶから、下心があるなんて知られたくなくなってしまった。何年も、自分でも訳がわからない拗らせ方をしていたのだ。
伝える気があるのかないのか、よくわからなくなってしまっていた。

「てか、お互い様じゃん」

急に優絵は怒ったようにこちらを見て、思考が中断する。

「弘毅だって、私の本気のチョコに気付いてなかった」

毎年貰う、ちょっと良い箱に入ったチョコレートを思い出す。
色んなフレーバーを貰ったが、どれも同じメーカーだった。
優絵はスマホの画面を手のひらでこすりながら、「あれ、本命に使う子多いんだから」と俯いた。
< 17 / 18 >

この作品をシェア

pagetop