3月15日ーafter whitedayー

…それは、知らなかった。独り占めしたくて、貰ったチョコは妹にも見せたことはない。見られていたら大騒ぎだっただろう。
愕然とする俺を無視して、優絵は話を続ける。

「一緒の高校に入れたし、一緒に居られる時間も増えたからいつか言おうって思ってたらこんなに時間経っちゃって。弘毅は頭良いし、背も高くなってどんどんモテるようになって焦って。だけど焦れば焦るほど自信なくなっちゃうし」

だから、ホワイトデーは特別な証拠みたいでそれだけで一杯一杯だったと、照れたように笑う優絵は、俺を殺す気らしい。

「お前、ほんとそういうとこだぞ」

ずるい。かわいい。
手で顔を覆って、優絵の眩しさに耐える。
今すぐにめちゃくちゃにしてやりたい衝動と、胸が甘く痺れる感覚。せめぎあう感情に翻弄される。

「…勉強するか。今日のところは」

立ち上がって手を差し出すと、優絵ははにかんで小さな手を重ねる。
嬉しそうな横顔を見ながら、「今日のところは」の意味は通じていないんだろうなと苦笑した。

「今から恋人だよね?テスト終わったら、いっぱい一緒にいてくれる?」

「ゆーえー!俺を試すな」

こちらの思惑なんて全然伝わらないのに、彼女は俺の想像を超えてくる。
翻弄されるのも悪くないと思ったそばから全力で揺さぶられて、少し強く手を握った。


END
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