敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
再会は沖縄で



『――Japan Wing air four seven five, wind three zero zero at five, cleared for takeoff, runway one six right.』

 管制塔の管制官から風向きと風力の情報、離陸ランウェイの指定を受けて、離陸の許可を得た。それに対してこちらからも応答する。

「Japan Wing air four seven five, cleared for takeoff, runway one six right.」

 滑走路の中心線上に機体を乗せていよいよ離陸開始だ。

 速度ゼロからスタートした機体を離陸に必要な速度まで加速していくこの瞬間が最も神経を使う。

 離陸のための滑走を始めると操縦輪を握る俺の隣から副操縦士の「エイティ」というコールが聞こえた。速度が八十ノットを超えた合図だ。すぐに自分の速度計も同じであることを確認する。

 ここでズレがあるときはなにか不具合が起きている可能性がある。そのときはただちに離陸を中止しなければならないため大切な作業だ。

「VI」

 エンジンを全開にして加速を続けていると、副操縦士から離陸決心速度を超えたときのコールを受ける。

「VR」

 続いて告げられたコールを合図にゆっくりと操縦輪を引いていく。機首を上げた機体が上昇を開始して滑走路を離れて飛び立った。

 副操縦士から上昇中のコールを受けて、ランディングギアを引き込むよう指示を出す。空気抵抗が小さくなった機体がさらに加速をしていく。

『――Japan Wing air four seven five, contact departure.』

 管制官から出発管制と交信するよう指示を出されて副操縦士が応答した。
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