敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている
けれど匡くんは険しい表情を浮かべて、少しも笑い返してはくれない。というより、こんな話で笑えるはずないよね。
私からもへらへらした笑みがすーっと消えていく。
匡くんは眉間に深い皺を刻み、こちらが怯えてしまうほどのこわい顔をしながら「不倫か」とぼやいた。
「その男とはどこで出会ったんだ」
口調は静かでも身に纏う空気に怒りを感じる匡くんに、私は元夫との馴れ初めから話し始めた。
元夫――川本和磨との出会いは一年半前。
専門学校時代の友人の紹介で知り合った。
同じ歳の和磨の職業は美容師で、同じく美容系の職に就く私とはすぐに意気投合して交際に発展。
その後、お互いに自分の店を持つのが夢ということもあり、それを叶えるためにもふたりで協力して支え合って生きていこうと言われて、出会いからわずか半年後の昨年の八月に婚姻届を提出した。
その二カ月後にまずは和磨が自分の美容室をオープンさせた。そのために彼は貯金のすべてを使ってしまったので、一緒に暮らすアパートの家賃や光熱費、生活費は当時まだ渋谷にあるネイルサロンに勤めていた私の毎月の給料から支払って彼を支えていた。
和磨の美容室が軌道に乗り、売り上げを生活費にも回すことができるようになった今年の四月に私も自分のネイルサロンをオープン。