敏腕パイロットは契約妻を一途に愛しすぎている

『匡、お前がまだ杏のことを好きなら、杏を助けてやってくれないか。たぶんあいつこのままだとひとりぼっちになりそうだから』

 続けて慎一が打ち明けたのは、慎一の家族と母親が新しく建てる家で同居することになり、実家のマンションを売りに出すというものだった。慎一の奥さんが杏の同居も提案しているらしいが、杏はたぶん気を遣って断るはずだと慎一は言った。

 そうなれば杏はアパートを借りてひとり暮らしをするしかないのだが、ネイルサロンの開店資金で貯金のほとんどを使ってしまい金銭的な余裕がないことを慎一は心配していた。

 杏のやつ……なにやってんだよ。開店資金だけで貯金使い果たすとか無鉄砲にもほどがある。あいつバカだろ。

 焼肉店で杏から話を聞く前から俺は彼女の現状について慎一からすべて聞かされて知っていたのだ。

『ひとり暮らしをする金がないなら俺のマンションに来い。衣食住は保証する』

 初めはただ、困っている杏を助けたいという思いからそう提案した。妹みたいに思っている杏の助けになりたい。そう伝えたけれど……。

『妹っていっても私は匡くんの本当の妹じゃないし』

 確かにそうだが、その言い方がなんだか距離を取られたようで胸が痛んだ。
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