孤独と孤高にサヨナラを
「そうか、お前は一人だったんだな。 俺とは違う意味で」

彼はそういうと一手指す。
それに私も話しながらついていく。

「でも悪くなかったわ」
「随分強気だな」
「貴方こそさっきまでのシナシナ具合はどうしたのかしら?」
「っは、そっちこそさっきまでのキレキレの手はどこにいったんだ?」

じゃれ合いのような口喧嘩。
そして盤面で繰り広げられる熱い攻防戦。
私達は子ども時代に戻ったようにお互いしか目に入らない。
次はどうする?
私はどうすればいい?
ワクワクが止まらない。
そんな夢のような試合も終わりが近づいてきた。
それを察知したのは私じゃない。

「…っ」

次は彼の番。
なのに盤面を見て止まっている。
私もじっと見て、あぁ、ついにかと目を見開く。
彼はそっと目を瞑ると小さく頭を下げ「…参りました」と呟いた。

それは私の勝利を伝える言葉だった。
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