八千代くんのものになるまで、15秒
ぎゅっと、教科書やノートを持つ手に力を込める。
あぁ、もうっ。
八千代くんの魅力に気づいて欲しいとか欲しくないとか!
そういうことを考えるのはやめようって、この前の体育祭でも思っていたのに!
「ちょっとなぁに?その不満そうな顔は。あんた、八千代の魅力についてあんだけ誰かと話したがってたくせに」
「ふ、不満そうな顔なんてしてないよっ」
「ふぅん?なら喜びなよ。八千代のファンが増えて嬉しいんじゃないの?」
「そ、れはそうだけど……」
これはそんなに単純な話じゃないっていうか。
簡単に喜べることでもないっていうか……
なんて、ぶつぶつと続ける私に、梢が目を丸くする。
「……もしかして、八千代のこと好きなの?」