八千代くんのものになるまで、15秒
「早くしないとほんとに誰か来ちゃうよ」
文化祭では演劇をするクラスなのか、黒板には配役と名前が書かれている。
きっと今は体育館で劇の練習をしているんだろう。
文化祭までのこの3日間は準備期間になっているから。
「な、なんでそんなこと……」
私の小さな声に、梓希くんは首を傾げる。
それから何かを考える間をあけて、
「‥‥安心したいから?」
って。
ますます意味が分からない……けど、このままこの状態っていうのもよろしくない。
だって、こんなところ誰かに見られたら恥ずかしくてどうにかなっちゃいそう。
「……私が動かない限りずっとこのまま?」
「そうだね」
「き、キスマーク付けないとほんとにだめ?」
「うん」
「付けたら、ちゃんと、離れてくれる?」
「ちゃんと出来たら。」
……これはもう、やるしかない。
小さな力で、梓希くんの肩を自分の方へと引き寄せた。
ちらり、彼の顔を伺うと、『お好きにどうぞ』とでも言っているかのように余裕の笑みを浮かべていて。
どうしよう、どうしよう。
どうすればキスマークって付けられるんだっけ。