八千代くんのものになるまで、15秒
《わざわざありがとう》
「これぐらいどうってことないよ。……じゃあ、ドアノブにかけておくね」
声は掠れているけれど、ちゃんと会話もできるし、あんまり酷くはないのかな?
ビニール袋をドアノブにかけながらそんなことを考える。
「よし、かけたよ。風邪お大事にね」
《ん……蓮も帰り道気をつけて》
こんな時でも私の心配をしてくれるんだから、やっぱり梓希くんは優しい。
梢が考えているようなことは一切起こらないような気がしてきたよ。
よくよく考えれば、夏休みに私の部屋に梓希くんを誘った時も、
家に誰かいないと行かない雰囲気を漂わせていたし。
そこのところの常識は持ち合わせている人なんだと思うの。
いきなり襲ってくるとか、そういうの、梓希くんに限ってあり得ないんじゃないかな。