八千代くんのものになるまで、15秒
嬉しかったから、報告させてほしいな。
「──あれ?梓希くん?」
その時、八千代くんの名前を誰かが呼んだ。
鈴の音みたいに可愛らしくて、透き通った声だった。
歩道の向こう側から、小柄な女の人が手を振って駆けてくる。
お花みたいに可憐で、愛らしくて。
同じ女の私でも思わず見惚れてしまうぐらい。
その隣には、八千代くんに似た男の人もいて、思わず八千代くんに視線を移せば……
「……仁、こんなとこで何してるの?」
いつものように綺麗な笑顔を浮かべて、八千代くんは彼に話しかけた。
「んだよ、見りゃ分かるだろ?デート帰り。これから百合の部屋で夕飯」
女の人の名前、百合さんっていうんだ……
名前まで可愛らしいって、もう、なんか色々ずるい……
それに、"仁"って呼ばれてたこの人、きっと八千代くんのお兄さん……だよね?