丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
秘書「副社長、おはようございます」
凱吾「おはようございます」
秘書「本日の予定の11時半からの会食ですが、高杉様より15分程予定をずらしてほしいと連絡がありました」

凱吾「わかりました」
凱吾はパソコン内の予定表を確認しながら答えた。

秘書「あと、これ…」
秘書が、ランチボックスをデスクに置いた。

凱吾「何ですか?弁当?」
秘書「はい。よかったら、食べてください。
副社長、会食はお食事を召し上がらないから」

凱吾「せっかくだけど……結構です」

秘書「そう言わずに…ここに置いておくので、食べなかったら捨てて構わないですから。
私、料理自信あるんですよ?」
凱吾「………」

秘書が副社長室から出ていく。

凱吾「ちょっと待ってください」
秘書「え?
━━━━━━!!!?」

凱吾「僕の言葉、聞こえなかったんですか?」

凱吾は秘書を睨み付けていた。

いや、正確には凱吾は睨み付けてはいない。

でも、あまりにも凱吾の雰囲気が恐ろしくて、秘書からすれば睨み付けられてるように感じるのだ。

凱吾「これ、いらないので下げてください」
ランチボックスを指差し言う、凱吾。

秘書「え?は、はい!」
慌ててランチボックスを掴む、秘書。

凱吾「あと…」
秘書「え?」
凱吾「“食べなかったら捨てて構わない”って、意味がわかりません。
せっかく作った食べ物、粗末にする気で作ったんですか?
そもそも、食べるか食べないかわからないのに作る意味がわからない」

そこまで言うと、スマホを操作し出した。
凱吾「もしもし、鈴嶺?」
一瞬で凱吾の雰囲気が柔らかくなり、声も甘くなる。
秘書は驚愕し、呆然と見ていた。

鈴嶺『凱くん!』
凱吾「フフ…今日、一緒にランチしない?」
鈴嶺『え!?する!!行く!!会いたい!』
凱吾「ほんっと、鈴嶺は可愛いなぁ。じゃあ…駅地下のイタ飯でいい?その近くで、仕事だから」

鈴嶺『うん!もちろん!』



そして━━━━━一足先に着いた凱吾。

店員「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」
凱吾「いえ、二人です。後から来ます」
店員「はい。では、こちらへどうぞ」

店員に誘導され、席に座る。
店員「お決まりになったら、お呼びください」
メニューを置きながら声をかけ、店員が去っていく。

凱吾はメニューを広げ、鈴嶺が好きそうな物をピックアップしておく。

「ねぇ、そこの席の人…ヤバくない?」
「うん、イケメン/////」
「なんか…絵になるよね……////」

長い足を組み、メニューを広げて見ている凱吾。
しかも鈴嶺のことを考えている為、柔らかい表情なのだ。

周りの客達が、見惚れるのも無理ない程に様になっていた。
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