絢なすひとと
「その時その場所で、プラス要素を見出せるのは、森崎さんの優れた才能だと思います」

唐突ともいえる褒め言葉に面くらってしまう。お世辞だと自分に言い聞かせながらも、浮かれた表情になっていたことだろう。

そうしてわたしと七尾さんのちょっとした縁は、もう少しだけ続くことになった。

そろそろ到着という頃合いに、彼のお腹がグウと鳴ったのだ。そういえばそろそろ夕飯の時間帯だ。
七尾さんがバツの悪そうな表情をみせる。
そんな顔をしてほしくなかったから、つい言ってしまった。

「よかったら、なにか軽く召し上がっていきませんか。送っていただいたお礼に」

「お礼のお礼、ですね」
七尾さんが頬をゆるめる。

本来なら知り合ったばかりの男性を一人暮らしの家に招き入れるなんて、不用心だろうけど。万が一、彼がなにか企んでいるなら家に着くまでにいくらでもその機会はあったわけだから。
それにそう、七尾さんはケガをしている。その足であまり長時間運転をするのも…
あれこれ理由をつけてはいるけど、本音はもう少しこの人と話がしたかったんだと思う。
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