そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

「こっち来たわ!」と緊張で体を強ばらせたソフィアのすぐそばで、ゼノンが足を止める。

手を伸ばせば届きそうな距離まで近づいたのも初めてで、ソフィアの緊張が最高潮に達したその時、ゼノンがソフィアに向かって右手を伸ばしてきた。

気配を察し、視線を上げたソフィアの目に、ゼノンの大きな手と、その向こうに氷のように冷たい眼差しが映り込み、一瞬で緊張は恐怖心へと変化した。


「やめて!」


髪に指先が触れた感覚に、思わず手が動いてしまった。

ソフィアがゼノンの手を払い避けた音が小気味よく響き、同時にソフィアは「しまった」と顔を青くする。

しかも、床に葉っぱが落ちたことにも気がついて、さらに青ざめながらソフィアは恐る恐るゼノンを見上げた。


「お、お父様。も、もしかして、今、葉っぱを……」


手を払い落としてしまったことへの後悔が大きすぎて、それ以上言葉にできなかったソフィアに代わって、ゼノンがあっさりと続けた。


「あぁ。髪に枯れ葉がついていたから取ろうと思ったんだが、余計なお世話だったようだな」

「ちっ、違うのお父様! 余計なお世話だなんて全く思ってないわ。びっくりしてしまって思わず……って、ご、ごめんなさい! 手が腫れてしまっているわ」

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