シュクリ・エルムの涙◆
「きっと昨日の疲れが出たんだね。ちょうど休めて良かったよ。食べれば精も付くだろうし、午後は頑張ってもらうから、二人共また覚悟しておいてよ?」

 アッシュはいつもの調子でおどけてみせた。あの宿題を全て終わらせようと言った二日前を思い出す。まだ二日前なんだ……あんなに普通だった家族の日々が。

 それからあたし達四人と一匹は黙々と昼食を済ませ、ザイーダに襲われる前のように、傾斜した森の中を着々と登っていった。不要な会話を控えたのは、ルクに余計なことを思い出させたくなかったからかも知れない。きっと真相を知ったら、ルクの心は傷ついてしまう。ぼんやりとでも、それくらいのことはあたしにも理解出来た。

 進むにつれ地面の角度は急になり、視界は徐々に開けていった。つまり木々がまばらになり始めているのだ。標高が上がったせいなんだろう、見上げればついにてっぺんが大きく見えて……明日にはママと……サリファの待つ、頂上まで手が届きそうだった。


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