シュクリ・エルムの涙◆
 それにお姫様みたいな天蓋付きの大きなベッドも大のお気に入りだった。でも三度目の訪問から眠らせてもらえなくなっちゃったのよね。その時からヴェルでのお泊まりは、王宮ではなくパパの自宅になったから。で、そうなった理由は……実はちょっと心当たりがある。

 二度目の訪問時、あたしはそのベッドですやすやと眠っていた。その時はまだ『ラヴェンダー・ジュエル』はあたしの左眼に嵌まっていて、あたしは『ジュエル』の語る夢の中で、とても幸せな心地に包まれていた。そうして聞いたの。温かい陽だまりのような優しい柔らかい綺麗な声を。

  ──リルヴィ……リルヴィ……気付いたら応えてちょうだい……

 あなたはだあれ? あたしは尋ねた。

  ──リルヴィとおんなじ血を持つ者よ……

 おんなじ血。五歳のあたしにはまだ意味が分からなくて、もう一度問い掛けたんだ。そしたら帰ってきた言葉は、

 ──リルヴィのパパのママ。そう……リルヴィのおばあちゃんよ……

 ……って。

 あたしに祖父母は存在しなかったから、初めはぼんやりとしか分からなかった。でも夢の中で不思議と知ったのだ。「パパのママ」──その言葉に喜びでドキドキしたのを今でも良―く覚えている!


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