スイーツは甘いだけじゃない
甘い幸せというものは、一瞬にして苦いものに飲み込まれてしまいがちだ。永遠を人は願うものの、ほんの少し選択を間違えただけで幸せは壊れてしまう。

「あの時、ケーキを作りに行かなきゃよかったんだ……」

マンションの一室で苺谷美緒(いちごたにみお)、否、天宮(あまみや)美緒は呟く。ホイップクリームを思わせる白いソファに座った美緒のお腹は大きい。美緒は今、妊娠している。

普通の妊婦ならば、子どもが産まれてくることを父親となる男性と共に喜び、子どもが育っていく姿を想像して会える日をわくわくするものなのかもしれない。だが、美緒の表情は暗く、妊娠していることを喜んでいるような顔ではない。

高層マンションの最上階の部屋は見える景色もよく、部屋も広々としている。部屋にはすでに生まれてくる子どものために、ベビーベッドなどが用意され始めていた。だが、それは美緒がお店で選んで買ったものではない。

「……」

美緒は冷めた目でベビーベッドなどを見つめ、ソファから立ち上がる。そして、玄関へと向かって歩いた。
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