町空くんは無自覚な闇


 町空くんはビルの中に入り、地下へと移動する。
 地下に待っていた光景は──


「お待ちしておました‼︎」
「足を運んでいただきありがとうございます‼︎」


 たくさんの強そうな不良たちが、深々と頭を下げて敬語を使っていた。
 その大半の人たちが体のどこかに傷を負っていて、ボロボロだった。

 あまりの恐ろしい光景が、私の思考を停止させる。


「彼らは皆、従順だよ。必ず藍原さんに従うんだ。これはささやかだけど、僕からのプレゼントだよ。彼らをどう扱ってくれても構わない。ただ藍原さんが思うように動かして、闇をも呑み込んでしまえばいいんだ」


 狂っている。
 この男は、私の想像を遥かに上回るほどの存在だった。

 危険という言葉だけでは済まされない。
 それなのに……上機嫌に話す町空くんはとても綺麗で、私なんかよりもずっと美しく輝いていて、やっぱり私の胸を高鳴らせる。


 ああ、闇は彼の物だと──確信した。

 だって今、頭を下げている彼らが従っているのは、私ではなく隣にいる町空くんなのだから。


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