旦那様は征服者~孔明編~
始まりは牡丹の花
スマホのアラームが鳴る。

目覚まし音を止めようと牡丹が身動ぎして、スマホに手を伸ばそうとする。

しかし、それは叶わなかった。

「何をやってる?」
孔明の低く、重たい声が耳元をくすぐる。

「え?あ、ご、ごめん…なさ━━━━━」
あっという間に組み敷かれて、両手首をベッドに縫いつけられた。

アラーム音が、ベッドルームに鳴り響いている。

「俺との約束忘れた?」
「いえ…でも、目覚ましが……」
「だったら、目覚ましなんかかけなきゃよかっただろ?」
「はい…ごめんなさい」

「いつも、言ってるだろ?
お前は何者で、誰のモノで、何をしなければならないか」

「でも、学校……」
「牡丹の口から“でも”なんて言葉、聞きたくない。
心配しなくても、遥大(はるひろ)が起こしに来る」
「はい…」

「お前が俺の言い付けを守らないから、お前の身体に(キスマーク)が増えていく。
可哀想に……また、牡丹は俺に抱き壊される」
そう言って、口唇を塞いだ。

牡丹は“あーまた今日も、学校行けないな”とボーッと考えていた。


孔明の言う通り朝から壊れる程に抱かれ、あっという間に失神し、次に目を覚ますと11時を回っていた。
孔明はいなくて、ちゃんとネグリジェを着せられていた。

ゆっくり起き上がり、ベッドルームを出た。

リビングダイニングに向かうと、孔明の部下・伊丹(いたみ) 遥大がアイランドキッチンから料理を運ぼうとをしていた。

「あ、牡丹さん。おはよ━━━あ、違うか!
こんにちは!ちょうど良かった。
今起こしに行こうとしてたとこだったんですよ」
人懐っこい笑みを浮かべ、テーブルにランチをセッティングする。

「伊丹さん、こんにちは。
あの、孔明様は?」
「仕事に出かけました。どうしますか?
ご飯食べたら、学校行きますか?」
「あ、はい!昨日も行ってないし。急いで食べてシャワー浴びていきます」
「了解しました~」

急いで食事をし、シャワーを浴びて準備する。

そして伊丹の運転する車に乗り込んだ。

「ごめんなさい。伊丹さん、忙しいのに…」
「いえ、牡丹さんの身の回りのお世話も僕の仕事ですから!」
バックミラー越しに微笑んでくる伊丹に、牡丹も微笑み返した。

そして学校に着いた。
伊丹が後部座席のドアを開ける。
牡丹が降りて、頭を下げた。
「伊丹さん、ありがとうございました!」

「では、また迎えに来ますので“くれぐれも”お一人で帰らないようにお願いします!」
いつもは穏やかで、柔らかい印象の爽やかイケメンの伊丹。
その伊丹の視線が鋭く牡丹に刺さった。


牡丹は「はい」と返事をして、門をくぐった。

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