クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

修哉さんは紺にストライプのジャケットにネクタイ無しのワイシャツ姿だ。
小春は白に花柄のワンピースにカーデガンを合わせたが、子供っぽ過ぎる気がして急に不安になる。

「この服装大丈夫ですか?ちょっと子供っぽ過ぎますか?」
修哉に小声で話しかける。

「充分可愛いいから大丈夫。
いや、ストーカー野郎に可愛過ぎるのは良くないのか?」
腕を組んで考え始める。
いやいやそう言う事ではなくて、と思わず突っ込みたくなる。

「へぇー。修哉が女性を認識出来るとは驚きだな。」
泉の突っ込みにも疑問に思い、小春は首を傾げる。

「露質度が低い服装が良いと思いますけど、今の感じで大丈夫ですよ。」
泉が付け足す。

「いや、ちょっと待って。
もうちょい地味な感じの方がいい気がする。可愛過ぎるのは自重しないと。小春クローゼット見せて。」
意外と真剣な顔で修哉が小春の部屋へ向かう。
慌てて小春も追いかけて、
「すいません。ちょっとお待ち下さい」と泉に向かって言いながら部屋に入る。

修哉がチョイスしたのは、
薄い黒地の七分袖のハイネックのインナーに黒地のサロペット付きワイドパンツだった。

小春は着替えて2人が待つ廊下に出る。

「どうですか?」

「いや、悪くないけど、露質なさすぎて黒ばっかりはお葬式みたいだろ。」
泉が腕を組んで言う。

「いやいや、このくらい肌は隠さないと。」
大の大人が小春の服装でああだこうだと言いあう。
「インナーはやっぱ白だろ。黒は肌の綺麗さが引き立ち過ぎる。」と泉が意見する。

小春は戸惑いながら2人のやり取りを見ていたが、
泉が「俺も着せ替えしたい。」と、小春の部屋に入ろうとした所で慌ててストップをかける。

「お前、
勝手に小春の部屋に入ろうとするなよ。」
修哉が苛立ちながら言う。

「えーっと。じゃあ。
下を白のインナーに変えてきますね。
あんまりこんな事してると、時間も無くなっちゃいますので」

小春は急いで部屋に入り、首元まで隠れるふんわりフェミンな白のブラウスに変えて廊下に戻る。

「可愛いな。」
泉が思わず言う。

「いや、だから可愛いいのは今日は自重しないと。」
修哉は額を抑えてまた考え出す。

「し、修哉さんもうこれで大丈夫です。時間無くなっちゃいますから。」
さすがに、小春も慌てて止める。
修哉も我に返り、
「そうだな。そろそろ行かないと。」

「ストーカー野郎は少しぐらい待たせとけばいいんだよ。」
泉が言う。

「小春ちゃんいいな。なんか和む。一家に1人欲しいな。今度貸してくれない?」

「はぁ。お前になんてやらん。」

修哉がお父さんみたいな発言して、小春は思わず吹き出す。

「そろそろ行きましょうよ。ねっ」
2人を連れだって玄関に促す。

「なんかいい匂いするけど、夕飯何?」
泉が靴を履きながら小春に聞く。

「今夜はオムライスです。」
小春が答えると、すかさず修哉が言う。

「ああそうだ。お前にはこの弁当買っといたから家に帰って1人で食べろ。」
さっき買ったお弁当を差し出す。

「ひど、お前ばっか小春ちゃんの手作りオムライスで俺には弁当かよ。」

なんだか高校時代の2人を垣間見れた気がして嬉しい。

「えっと。あの、今度良ければ、お礼も兼ねてちゃんとしたご飯作りますのでいらして下さい。」
恐縮しながら小春が言う。

「マジで。やった。
小春ちゃん天使。 
俺も小春ちゃん好きになったわ。」

「はぁ。
だからお前には会わせたくなったんだよ。
小春から1メートル以上近づくな。」
シッシッとしながら修哉は小春と泉の間に立ち、
「今日の仕事次第で、家に呼ぶかは決めさせてもらう。」
と言い放った。

「なんだよ。その独占欲。お前の物なのかよ。ガキじゃ無いんだから。」

「小春は俺のだよ。
俺の家だし、俺の許可が必要なんだよ。」

「なんだよ。どこの頑固親父だよ。」
泉の言い文が面白すぎて思わず、
小春ひふふふっと笑ってしまう。
こんな時に不謹慎だと思って、「すいません。」と謝る。

「おい。笑うとヤバいな。マジで天使だ。」
泉が小声で修哉に告げる。

「やめろ。見るな。近づくな。」
修哉は睨みをきかせて、小春の前に立ち隠す。
下に降りるエレベーターの中でもずっとこの状態で2人は歪み合っていた。

小春には大の大人が戯れ合う感じが可愛く見えて、泉に持っていた緊張感も気がつくと溶けていた。

「修哉さんと泉さんは仲良しなんですね。
修哉さんのこう言う姿は見た事ないのでなんだか嬉しいです。」
小春は、笑いながら思った事を言う。

「仲良くないぞ。
いつも俺につかかってくるからかなりウザい。」
と修哉が言う。

「俺は結構好きだけど。
修哉は裏表無いし、まぁ。
ずっと裏なんだけど、こいつと居ると気を使わなくていいから楽なんだ。」
と泉。

「良かったです。これからも修哉さんをよろしくお願いします。」

「よろしくお願いしない。」
修哉がはぁ。とワザとらしくため息を付く。

「小春にかかれば、悪人も善人になるな。」と独り言を言う。
「俺は正義の弁護士だからな。悪人じゃない。」
聞き捨てならないとばかりにまた泉が反論する。
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