クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

小春の心臓がドクドクと嫌な音を立てて、手に汗を握る。

「小春、久しぶり。」
入口辺りでこちらと目が合い支店長が近づいて来る。
小春は震えながら、ペコリと頭を下げる。

近きながら、支店長香山は隣に居る男に気付く。
誰だこの男は?どう言う仲だ?香山の視線が厳しくなる。

泉は表の顔でニコリと笑い立ち上がる。
「こんばんは。香山さんですね?
はじめまして。私、こう言う者です。」
泉は胸ポケットから名刺入れを取り出し名刺を差し出す。

「は?弁護士?
どういう事?小春?」
香山の鋭い目に怯えながら小春は下を向く。

「まぁまぁ。香山さん、穏便に。
とりあえず、座りましょう。」
穏やかに話しかけて目の前の椅子に香山を座らせる。

「俺は小春と一対一で話したいんですよ。弁護士なんて必要無い。」

「貴方は必要無いかもしれませんが、櫻井さんは必要なんです。何故なら貴方が怖いから。貴方は彼女にとってはセクハラ上司でしか無いんです。」
穏やかな口調で、鋭く諭す。

「は?俺はセクハラなんてしてない。全部愛情表現だ。」

「貴方の一方通行でしょ?
櫻井さんに一度でも同意を取りましたか?
好まれていると確証がありましたか?」
鋭い目つきで香山を見る。

「今日、櫻井さんが来たのは貴方にもう2度追われたく無いからだ。」

「小春?俺は小春が好きなんだ。分かって欲しい。愛してる。ずっと言えなかったけど、本気なんだ。」

小春は泉の顔を見る。力強く泉は頷き小春に勇気を与える。
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