クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
気付いたら車は道隅に停めてハザードランプを点滅させている。

修哉さんが心配顔でハンカチを差し出してくる。

「ごめんなさい、大丈夫です。」

「大丈夫には見えない。何て書いてある?見ていいか?」

「…はい。」
修哉さんがどう思うか少し心配だが、見せない訳にもいかないと思いおずおず差し出す。

修哉さんは一瞬険しい顔をして手紙を読む。

「こいつ。何にも分かってないんだな。小春の気持ち。」
はぁー。深いため息を吐く。

自分勝手な感じにほとほと気持ちが掻き乱される。

「働いてる時はこんな話が通じない人では無かったんですけど…」

「小春は行く必要ない。気にするな。見なかった事にすればいい。」

修哉さんがシートベルトを外して優しく抱きしめてくれる。
分かってる。会ってもきっと何も伝わらない。
ただ、逃げても何も変わらない気もする。

「修哉さん。買い物行きましょ。もう大丈夫です。」

「本当に⁉︎大丈夫には見えないし、このまま家に帰った方がいいと思う。
でも、どうしても行きたいなら止めないけど。」

いつも私の気持ちに寄り添って気遣ってくれる。私には修哉さんが居てくれれば大丈夫。きっと、平気。

ぎゅっと抱きしめ返して、顔を上げ、笑顔を作る。
「気分転換になるので、買い物にいきたいです。」

「…分かった。」
再び車を走らせ近くのスーパーに行く。

「ありがとうございます。
私には修哉さんが居るから大丈夫です。 
怖がってるだけじゃ嫌だし、
負けたく無いんです。」
涙を拭いて顔を上げて修哉さんを見る。
そう言えばハンカチを借りたのはこれで3回目だ。
「ハンカチ今度まとめて返しますね。」

修哉さんが笑って答える。
「小春には敵わないよ。ハンカチは小春の為に持ってるんだから返さなくていい。」
苦笑いして、頭を軽くポンポンと撫でてくれる。
「じゃあ。泣かないようにしなくちゃ」

「泣いていいよ。でも俺の前だけにして。」
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