クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜

手を繋いでスーパーに行く。
修哉さんはどこまでも優しい。
買い物カゴを片手に片手は私の手を離さない。

「明日の夕飯は何にしますか?」

「そうだな。
オムライスにしよう。
小春のお母さんの味なんだろ?」

そう言えばそんな話したなぁ。修哉さんは?お母さんの味ってあるんだろうか?

「修哉さんは?お母さんの味ってありますか?」
何気ない振りしで聞いてみる。

「…あの人はあんまり料理はしなくて、
子供の頃はほとんどばあちゃんが作ってくれた。
たまに気が向いたらカレーだけは作ってたな。
本当、ピアノしか出来ない人だった。」
遠い目をしながら話てくれる。

「じゃあ。明日はオムライスで明後日がカレーにします。」
ちょっとした事でも話してくれて嬉しくなる。
いいなぁこういうの。

まるで新婚さんみたい。修哉さんに言うと照れちゃうかなぁ。

じゃがいも、人参、いろいろ買っていく。
朝ごはんの材料に卵と牛乳は欠かさない。

「修哉さんは、朝ごはんはパン派ご飯派?」

「ほぼ食べないけど、強いて言えばコーヒー派」

「えー。私には食べろって言うのに。」

「小春は食べなきゃダメ。昔よく全校集会とかで倒れてただろ?」

「えっ!なんで知ってるんですか?」
確かによく貧血で倒れてたけど、修哉さんと仲良くなる前の事だし、なんで知ってるの?

「…集会とかだるくて保健室で寝てたから、小春よく来たよな。名前は知ってたよ。」

そうだったんだ。
そんな前から知られてたなんて不思議な感じがする。
「なんか嬉しいです。」
繋いだ手をぎゅっとする。

修哉さんと私の運命の糸は私の知らない前から繋がってたのかな?
嬉しくなって笑顔こぼれる。

「無理してないか?」
心配そうな顔をしている。

「今は本当に嬉しくてです。私の知らない修哉さんが私を知っててくれたなんて嬉しい。」

「…分かった。早く買い物して帰るぞ。」

レジを通ってお会計の段階で、また修哉さんが払おうとするので、食費くらいは払わせて欲しいとお願いする。

「私だって働いてるし、修哉さんちに居候してる手前何か役に立ちたいんです。」
言い切って逃げる。

「居候じゃない、同棲だろ。
小春は家政婦じゃない、恋人だ。家事だって全部やる必要は無い。人の手を借りるべきだし、俺だって出来る事はする。全部自分でやろうとするな。」

買い物袋に荷物を詰めながら、修哉さんが言う。
ちょっと強引過ぎたから怒ってるの?

「修哉さんの役に立ちたいんです。
いろいろ助けてもらってるから、無理はしません。
料理は好きなんです。やらせください。」

「…分かった。」
< 88 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop