クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
車の後ろのトランクを開けて、食料を詰め込む。
私も唯一持たせてくれた朝食用の食パンを置く。
「えっ。ちょっと、せ、先輩⁉︎」
突然、抱きすくめらて驚く。
ぎゅっとされて、びっくりし過ぎてあたふたパニックになってしまう。
「ど、どうしたんですか?」
「小春、何をふっきって、何を決心した?
ちゃんと話して。」
修哉さんにはお見通しだったらしい。隠し通せる訳が無いけど…。
「私、支店長と一度話し合おうと思います。逃げてるだけじゃ何も解決しないから。」
抱きしめられたまま話す。
「そんな事だろうと思ってたけど、俺に内緒で1人で会うつもりだった?
そんな事、そんな危ない事絶対させないから。」
頭をぎゅっと胸に押さえつけられながら言われる。修哉さんの心臓の音が聞こえる。
「後からちゃんと話すつもりでしたよ。見守ってて欲しいから。私だって、1対1は怖いから」
顔を見上げて微笑んでみる。
不意にキスされて、また驚く。
「先輩、って言ってくれてありがとう。」
あっ、焦って呼び方戻ってた。
「小春はこうと決めたら頑固だから、止めないけど…良かった。俺を頼ってくれるんならそれでいい。」
そっと額にキスをして離れた。
修哉さんが助手席のドアを開けて、乗るように促す。
1人で会いに行くって思われてたんだ。
さすがに無謀な私でもそれは無理、心配症な修哉さんに内緒になんてもっと無理だし。
運転席に乗り込んで修哉さんが言う。
「高校時代の知り合いに弁護士がいる。
ちょっと変わった奴だけど、第三者を入れた方がいい。一緒に立ち会ってもらおう。」
「心強いです。」
「そうか。
良かった。…手紙を渡すタイミングを間違えたって内心心配したけど、小春は思ってたより強いな。」
そう言って微笑む。
「先輩が側に居てくれるからだと思います。」
「また先輩って言ったんだけど、それワザと?」
ニヤッと笑ってキスをしてくる。
「ち、違います。ど、動揺してるんですこれでも。」
心拍数が上がってどんどん墓穴を掘ってる気がしてくる。
落ち着かないと、先輩呼びに戻っちゃう。
「俺は嬉しいけど、キスする口実が出来て。」