クールな歌手の揺るぎない思い〜この歌が君に届きますように〜
「なんだよ。ノリが悪いなぁ、再会を祝して乾杯しようぜ」
泉はそう言いながら、水割りのウィスキーを一口飲む。

「小春の所にまた手紙が来た。」
修哉は流される事なく、話を切り替える。

泉に2枚の封筒を差し出す。

「なるほど、急に早い展開だと思ったら相手から言ってきた訳だ。

で、彼女は何て?」
さすがに泉も真顔になり聞いてくる。

「いつまでも逃げてる訳にはいかないって、会って決着をつけないといけないって」

「賢明な意見だね。こういう輩は早めに目を覚まさせてあげないと、後々厄介な事になりかねない。本人が会う気があるなら、喜んで仲立ちするよ。」

「お願いしたい。」

「まぁ。お前が間に入ったら暴力事件に成りかねないからな。」
ニヤッと笑って話を続ける。
「で、どこまで攻め込む?慰謝料分だくるか?それとも社会的地位を剥奪させるか?男の風上にも置けないからな。
お望みとあらばどこまででも陥れますよ。」

呆れた顔で修哉が言う。
「彼女に2度と近付かないように出来ればそれでいい。後は泉に任せる。」

「へぇ。意外と冷静だな。お前だったら骨の一本くらい折るつもりかと思ったよ。」
はははっと泉は大げさに笑う。

「彼女にした行為は犯罪だし、それに与えた精神的苦痛は大きい。
だけど、刑事事件になれば小春は矢面に立たなきゃいけないだろうし、思い出したく無い事を再度思い出し人前にさらさなきゃいけない。
やっと取り戻しつつある自分をまた失う事に成りかねない。
今、小春に必要なのは怯えずに暮らせる平和な環境だ。」

「ふーん、さすがに修哉だ。読みが深い。
そう。結局裁判になれば傷つくのは被害者だ。人前に立たす事なく平和解決を望むって事だな。」
腕を組んで修哉に問う。
「それでいい。」と修哉も同意する。

「分かった。一緒にこいつに会って、2度と近付かないよう、念書と慰謝料ぐらいは多めに請求してやるよ。

まぁ。もっとも、犯罪者は自分を正当化したがるから、こいつもまったく自分が加害者だとは理解してないし、あわよくば彼女が手に入るとまで思ってる勘違い野郎だから目を覚まさせるまでちょっと厄介かもな。」

「で。お前はどうする?彼女の側に居たいのか?」

「出来れば。」

「こいつにとってもお前は天敵だからな。まぁ。諦めるきっかけにはなるだろうが、逆に気持ちを逆立たせるかもしれない。
お前も手出しはするなよ。冷静でいられるか?」

「分かってる。」

「オッケー。じゃあ。商談成立だ。」
2人は固く握手して、修哉は席を立つ。

「おいおい。本当に帰るのか⁉︎そんな品行方正な奴だったか?お前。」

「小春が家で待ってる。」
じゃあ。と軽く手を上げて去っていく。

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