財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 京極さんの経歴や容姿まで事細かに書かれてあり、美男美女の結婚は秒読み段階だとあった。

 ショックを受け、ズキッと胸の痛みを覚える。膝に雑誌を広げたままぼうぜんとしていたら、すべり落ちてバサッと床の上に落ちた。

 のろのろと体を屈めて拾い、顔を上げた私は表情をくしゃっと歪めた。

 食事に誘われたけれど、その後日程について連絡はない。京極さんは小玉さんと結婚するんだ。私には手の届かない人だったけれど、現実を突きつけられて空虚感に襲われていた。


 夕方、母は退院した。

 徒歩でも帰れる距離だが、タクシーに乗って自宅へ向かった。

「紗世、迷惑をかけちゃったわね。ごめんなさいね」

 リビングに入ってソファに座った母が申し訳なさそうな顔になる。

「ううん。お母さん、無理かもしれないけれどあまり考えすぎないで。明日から私が代理で事務処理をするから、しばらく体調が良くなるまでゆっくりしてね」

「そうもいかないわ。胃潰瘍はそれほどひどくないんだから、寝てなんていられない」

 母は言うことを聞いてくれない。

 私はきゅっと唇を噛んでから、対面のソファに座る。
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