財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「我妻社長ならば敏腕ですし、年は離れていますが、優しい旦那様になりそうです」

 工藤さんの言葉に小さく笑みを浮かべるが、本心では我妻社長にまったく惹かれていない。それが私の気持ちに重くのしかかっている。

「とにかく、ふたりで会ってみます」

「金曜日ですね。おしゃれして会えば気分転換にもなりますよ。紗世さんはずっと大変だったから」

「今を乗り切らなければ。若いし健康が取柄ですから」

 ガッツポーズを見せると、工藤さんが笑う。

「紗世さんの見た目は綺麗で透明感があって華奢ですけど、中身は頑張り屋でしっかり者なんですよね」

「私が綺麗?」

 他の褒め言葉よりも〝綺麗〟に引っかかって首を傾げる。

「え? 綺麗ですよ。大学入学時は可愛いお嬢さんでしたが。紗世さん、そう思っていないんですか?」

「お、思ってないです」

 苦笑いを浮かべて頭を左右に振った。

「無自覚なところが可愛いですよ。我妻社長が好きになるのも当然です」

「好きとは限りませんよ」
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