財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 日本を離れる前に紗世に話をしようと思案していた折り、代官山で偶然に彼女を見かけた。

「一樹、今日はありがとう」

 にっこり笑う彼女は今人気の雑誌モデルの小玉奈緒美。俺は〝奈緒〟と呼んでいる。

 彼女は同い年の俺の幼馴染で、とある目的から夕食を共にし、彼女の住む代官山のデザイナーズマンションへ送ったところだった。

「ねえ、お休みのキスをしなきゃ」

 奈緒が楽しそうに笑いながら俺に顔を近づける。

「おい、離れろ。お前とキスするつもりはない」

 俺は親しげな笑みを浮かべながら、口ではぞんざいに突き放す。目の端で道路向こうの数人が足を止めたのがわかった。

 奈緒のスクープを狙っているマスコミか?

 道路向こうへ視線を向けた俺は、三人の男女の中に紗世の姿を認めて驚いた。

 こんなところで会うとは……。

 紗世が先に歩き出し、ふたりも続く。

「なーんだ。マスコミかと思ったのに」

 奈緒が肩をすくめる。

「ねえ、部屋でコーヒーでもどう? (りょう)()がいるわ。一樹に会いたいって言っていたし」
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