あの日の夢をつかまえて

商店街を歩いていると、
「あの、すみません。お尋ねしたいのですが」
と、細くて背の高い男性に声をかけられた。



男性はスマートフォンの画面を私に見せつつ、
「××将棋教室ってどこにあるのかご存知ですか?」
と、言った。

画面には××将棋教室のホームページが表示されている。



「え?」



思わず聞き返してしまった。



「すみません、完全に迷子になってしまって」



男性は恥ずかしそうにうつむいた。



「地図を見ても住所を見ても、わからなくて。僕、方向音痴なんです」



私は、
「あの、××将棋教室なら知っています。……知り合いが先生をしているので」
と、笑顔で男性に答える。



「恋人」と言いたかったけれど、グッとこらえて「知り合い」と言った。



「え?澤田さんのお知り合いの方ですか?」



男性も笑顔になる。



「みぃく……、澤田さんのことを知っていらっしゃるんですか?」


< 41 / 51 >

この作品をシェア

pagetop