朝、キスして。

吉田くんに訊かれて、改めて否定。

けど、ポロッと本当のことを言ってしまった。


誘導尋問にまんまと引っかかった気分……。


それに対するみんなの反応は真っ二つ。


「へぇ、幼なじみ!」

「すげぇ。美男美女の幼なじみとかマジでいるんだ」


という驚きの声と。


「なーんだ。違うのか」


という落胆の声。


前者はわかる。

後者は……たぶん、“フィアンセ”という言葉が衝撃的すぎて、“幼なじみ”が霞んだんだと思う。


過度に期待されたり大事にされたりするより、むしろ落胆される方が私としてはありがたい。


すると、不意にトントンと肩を叩かれた。


「なぁ、有咲」

「?」


話しかけてきたのは吉田くん。

顎に手を当てて、何やら考え込んでいるみたいで。

真っ黒な瞳がじっと私を見る。


「……なに?」

「有咲って……くせ毛?」


はい?

何を言うかと思えば……考え込んでまで訊きたかったのが、それ?


「そうだけど……」

「っ!」


その瞬間、吉田くんの目がパッと開かれた。

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