朝、キスして。

図書委員の仕事が終わって教室に戻ると、瞬が自分の席に突っ伏して眠っていた。

勉強している最中だったのか机の上には問題集が広がっていて、右手はシャーペンを持っている。


無防備な寝顔にドクンと胸が動く。

確かめてみようかな。

これが恋なのかわかるかもしれない。


もし恋だったら、有咲に罪の意識を持ちながら生きて、もう二度とこの感情を表に出さない。

いつか消さなきゃいけないんだ。

このまま抱え続けるくらいなら……。


私の頭のなかには悪魔が住んでいるんじゃないかと思う。

じゃなきゃこんな考えに至らない。


私は、眠る瞬の頬にキスをした。



──ううん。正確には、キスを“しようと思った”。


できなかった。

直前で思いとどまって、やめた。


こんな形で有咲を裏切れない。

有咲を裏切らないとわからない感情なら、もう一生わからなくていい。


私は瞬が起きるより早く教室を後にした。


< 309 / 343 >

この作品をシェア

pagetop