その騎士は優しい嘘をつく
 そこで、ハイナーはアンネッテの顔を見つめた。アンネッテも驚いてハイナーの顔を見る。

 目が合う。

「まず、やるべきことだが。俺は、君を抱きたい。ずっと我慢をしていた。あの遠征中も、娼婦を抱かずにずっと我慢をしていた」

 騎士団の遠征に娼婦はつきもの。
 それは昂ぶりをおさえることができない騎士たちを慰めるために。

「それに、君のお姉さんが君のことを姫と呼んでいたな」

 なぜ、姫なのか、というその意味を考えるハイナー。まあ、一年も離れ離れだったのだ。つまり、そういう秘め事は、今日が今年の最初ということで。

「どうか、今日は俺だけの姫になってくれないか?」
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