甘くて、切なくて。
始まりの春
明るい日差しが降りそそぐ校庭。

大きな満開の桜の木。

私は憧れの学校の先生になった。

「初めまして。この度、3年2組の担任になりました、安部川 那月(あべかわ なつき)です。1年間よろしくお願いします。」

念願の高校教師…!めちゃくちゃ緊張…。

「おなしゃーす」「やったー!女の人だー!」「可愛い〜」「よろしく〜」

わ…、すごく騒がしいクラスだな…。

でもみんな優しそうな顔してる。

「じゃあ早速ホームルームはじめよっか〜」

「ちょっと質問!」

緊張が少し溶け、ホームルームを始めようとした瞬間、1人が手をあげた。

「えーと、一宮 陽斗(いちみや はると)く
ん。」

教卓に貼ってある名簿を見ながら名前を確認する。

「はいはい!俺陽斗っていいます!
質問なんですけど、先生って彼氏います
か?!」

…え?ほんとにこういう事聞かれるんだ…

「陽斗なに言ってんの!?」「お前食い気味す
ぎ。」「先生困ってるじゃん。」

みんなが笑いながらつっこむ。

当の本人はじーっと私の返事を待っている。

「いない…です…」

なんか恥ずかしいんだけど。

「え〜意外!」「先生結構可愛いのに」

みんなが意外そうに驚いた。

彼氏いるように見えるのか…?

「いないのか…。ありがと、せんせ。」

にこっと笑った顔は人懐っこいまぶしい笑顔だった。でも少し柔らかい雰囲気で。

まるで…

「子犬みたい…」
思わず口にでた。

シン…と一瞬静かになったと思えば、クラス
中が爆笑した。

「子犬?!一宮が子犬?!」「やばい笑える」
「陽斗かわい〜」

「え…俺…こ、子犬なの?」

目をぱちくりさせながら不思議そうにつぶやく彼にまたみんなが笑った。つられて私も笑う。

このクラス、うまくやっていけそう…!
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