最初で最後の恋をおしえて

 穏やかな空気の中、迷いつつも心に引っかかっていた質問をする。

「大和さんの"叶えたい夢"というのは、如月ハウスのトップまで上り詰めることですか?」

 なにを言われているのか、意味をつかみ兼ねている羽澄に言葉を重ねる。

「『婚約者の立場を降りるつもりはない。俺には叶えたい夢がある』と仰られていたので」

 彼には、たくさんの愛をもらっている。羽澄からの愛を、もう疑う気持ちはない。

 ただ、やっぱり始まりは"如月"の名のお陰だったのかなと思うと切なくなる。

 彼は恵まれない境遇で育ち、父の誘いからトップの座を狙おうと志した。その夢を叶えるための婚約。

 羽澄は頷いて、紬希を真っ直ぐに見つめた。

「俺の叶えたい夢は、もしかしたら叶えられるかもしれない。それは紬希、きみ次第だ」

 唇が震えそうになり、上手く返事が出来ない。

 やっぱり如月の姓にしましょうと言えばいいのか、彼がトップになれるように支えていきますと言えばいいのか。

 言葉の出て来ない紬希に代わり、羽澄が続きを話す。

「俺の諦めていた夢。愛する人と幸せな家庭を築きたい」

 すぐには意味を理解できずに、何度も何度も言葉を噛み締めていると、自然と涙がこぼれた。

「はい、私もそうなりたいです」

 震える声で応えると、羽澄は紬希の体に腕をまわす。

「幸せになろう」

「はい」


fin.

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