最初で最後の恋をおしえて

「私、如月の名前に甘えたくありません」

 そして如月の名前から逃げたくない。

「ああ、眞太郎さんと話さなきゃな」

 如月さんでも、きみの父親でもなく、眞太郎さんと呼ぶのを初めて聞いた気がする。彼の決意みたいなものを感じた。

「少しだけ残念ですけど」

「なにが?」

「子どもの頃、好きな子の名字に自分の名前を付けるのが流行っていた時期があって、少しだけ憧れていました」

 その頃、特に誰かに憧れや恋心を抱いていたわけではなかったけれど、遊びでもできないと思った。子ども心に自分は如月から変えられないと、理解していたのだと思う。

「羽澄紬希か。悪くないけどな」

 キュンと胸が鳴いて顔が熱くなる。想像よりもずっと恥ずかしい。

 そんな紬希の表情を見て、羽澄は口の端をあげ悪い笑みを浮かべる。

「そんな顔が毎日見られるなら、羽澄の姓にするのもありか」

「わっ、そんな理由で決めてはダメですよ」

「わかってるよ」
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