最初で最後の恋をおしえて
羽澄side:なにも知らないお嬢様

 目を見開き絶句する紬希を見つめ、鼻先で笑いたくなる。なにも知らないお嬢様。その姿をまさに具現化していた。

 如月眞太郎。現、如月ハウスの代表取締役。彼と出会ったのは、中学生という多感な時期だった。

 母と昔馴染みだという彼は、俺に告げた。

「きみは才能に溢れている。どうだろう。私はきみを支援したい」

 父を早くに亡くし、家は裕福とは言えなかった。勉強する環境が整っていると言い難い状況ではあったが、そういう言い訳はしたくなかった。

 社会の大きな渦に飲み込まれないように、反骨心で頑張っていた。

 そんなときに現れた、自分にとっては見知らぬ大人。

 甘い誘惑に聞こえ、最初は警戒した。

「私にはひとり娘がいる。将来、娘にふさわしい男になる。これが条件だ」

 無条件に支援すると言われても、信用しなかっただろう。交換条件を出されたために、信用に値すると思ったのだから、本当の悪党だったら騙されて酷い目にあっていた。

 提示された条件を飲んだのは、子ども心に母を助けたかった思いもあったのかもしれない。
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