もう、キスだけじゃ足んない。
「っ、ぅ……あ、」
「声、我慢して」
『っ……』
「俺たち許嫁なんだから。
顔、赤くしたらだめだろ?」
『でも……っ』
こんなの、ドキドキするに決まってる……!
なんて。
「頼むから……もうかわいいこと言わないで」
胡桃よりも俺のほうがいっぱいいっぱい。
なんで、こういうときばっか本心出してくれんの。
『もう、やめて……』
潤む瞳が俺を見据えて、グッと喉の奥で音が鳴る。
っ……その目もやばいんだって。
つくづく彼女の目に弱い俺。
今にもめちゃくちゃにしたい衝動に駆られるのを懸命にこらえるように。
『っ、あ……』
目の上にそっと手を当てて、俺が見えないようにしてから、囁く。
「ほら、早く。俺のこと突き飛ばして、抵抗して?
許嫁なんだから」
震える手をとって、上書きの意味を込めてまたそこに口づける。
お嬢様が好きなのは許嫁の俺じゃなくて、執事だから、いいかげん離れなくちゃいけない。
俺に抵抗しているそぶりを見せなくちゃいけない。
『っ、や、だ……っ』
「なにがやだ?」
『抵抗、したくない……遥に、』
っ……さっきやめてって言ったじゃん。
なのにさぁ……あーもう。
ほんと、かわいすぎんの勘弁して。
『はる、か……』
くっそ……っ。
「お嬢様」
『なに……っ!?』
「あ……」
瞬間。
スタッフの誰かが思わず声を漏らしたのが遠くで聞こえた。