もう、キスだけじゃ足んない。
「遥」
「なんかわかった……って、まじで」
遥も俺も思わず顔をしかめた。
俺が持っている缶は、桃華たちが飲んだもの。
でもそれは。
「酒だろ、それ……」
アルコール度数9パーセント。
一気飲みなんかしたら、人によってはすぐに顔を真っ赤にして、酔っ払うほどの強さ。
見た目はただの桃の炭酸ジュースに見えるかもだけど、中身は立派なお酒。
「なんでこんなものがうちに……あ、」
「もしかして、前に母さんたちが来たとき……」
「それだな」
なにかを思い出したような遥に、俺も思い出した。
そうだ。
確かまだ随分と前。
俺たちがまだ胡桃と疎遠になってたとき。
うちの親と、胡桃と桃華がいないのに、なぜかふたりの両親の4人が遊びに来て。
「はあああ?まーだ、ふたりと付き合ってなかったの?男見せなさいよ!男!」
「母さんの言う通りだぞ。
胡桃ちゃんも桃華ちゃんもかわいいんだからすぐにそこらの男に捕まるぞ?」
「ほっといてよ」
「うるさ」
「ていうか、桃華のことかわいいって言わないでくれる?」
「胡桃のことかわいいって言っていいの、俺だけなんだけど」
「ふたりに想われるなんてさっすが私の娘たち!」
「ほんとになぁ。早くふたりと付き合ってくれよ?」
なんていろいろ酔っ払った状態でめんどくさかったのを覚えてる。
あのときのお酒、まだうちに残ってたんだ。
そういや、あのとき、せとかさん……。
「んんっ、あつい……っ、」
「も、桃華……!」
目に毒すぎる……!
いつの間にかごろんと絨毯の上に横になっていた桃華の頬には赤みが差して、額にはうっすら汗が滲んでいて。
こんなときだというのに、
『っ、はぁ、杏……っ』
いつかの夜が思い出されてカッと体が熱くなる。
だめだ、だめだ、だめだ。
何考えてんの、こんなときに。
「桃華、とにかく水飲もう」
邪念を振り払うように優しく声をかけて、水を汲もうとキッチンへ向かおうとしたとき。
「は……ちょっ、胡桃っ!?」