もう、キスだけじゃ足んない。
***


「はる、か……っ」


「っ……は、なに?」


家、出る時間……っ。

清見さん、迎えに来るから……っ!


「ごめん、あとちょっとだけ、」


それ、さっきから何回目……っ。

学校から帰ってきて、ふたり、リビングに入った瞬間。


『胡桃……っ、』


『え、なに……きゃあ!?』


『驚かせてごめん。
時間ないし、もう限界』


どこか焦るように抱き上げられたと思ったら、そのままソファーに押し倒されて。


『体、痛くならないようにするから。
ごめん、キスさせて……っ』


鼻がふれあう距離で熱っぽい瞳がぶつかって。


『はる……っ、んんっ』


学校でもあんなにキスしたのに。


『ぜんぜん足りない、胡桃がたりない』


それから息もできないような深いキスを何回もされている私。


「胡桃、胡桃……っ」

「好き、好きだよ。
すげえ好き」


とんでもない熱量をぶつけられて、頭も心も、ぜんぶがすぐにとけていく。


「胡桃も、言って」

「っ、私、も……っ」


好きだよ、好き。

いつもはぎゅっと両手を握ってくれてるけど、今日は違う。


「体、痛くない?」

「っ、へい、き……」


いくらソファーといえ、ベッドじゃないから。

押し倒されたときから、今もずっと。


腰と後頭部に遥の手が回って、体を支えてくれてる。


キスは激しいのに、途中そうやって気遣ってくれる優しさとのギャップに、キュンと胸が高鳴る。


「続けて、いい?」

「ん、大丈夫……」


……。

大丈夫、じゃない!
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