最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「……なんだか信じられませんね。まるで奇跡みたいです。母を知る人と出会えるなんて。しかも、母の着物まで――」

陽芽は心を決めたのか、イザベルの手を取り握った。

「Thank you so much. I'm so happy.」

つたないがまっすぐな英語で伝えると、イザベルも涙目になって陽芽の手を強く握り返した。



着物は後日、車で受け取りに行くことになった。なにかお礼をしなければと考えを巡らせる。

アパートメントを出たあと、俺と陽芽はイザベルが勧めてくれたビストロノミーで夕食を取った。

フレンチを英国流にアレンジしていて、肩ひじ張らずに目と舌を楽しませてくれるいい店だ。

「志遠さん。私、こんな出会いは想像していませんでした」

「もちろん俺も想像していなかった」

ふたりでワインを飲みながら、今日のドラマティックな出会いを振り返る。

「今日への布石と考えれば、俺たちが出会ったあのさんざんな一日も、意味があったのかもしれないな」

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