最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
すると、志遠さんは熱のこもった目でじっと私を見つめた。

これから戦地にでも赴くのかと思うくらい思い詰めた声で、真剣に答える。

「この出会いは……運命だ。君の欠けた部分を、俺に補わせてくれ。今さら信じられないだろうが、愛している、陽芽。俺の気持ちに応えてほしい」

あまりにも英国騎士らしい情熱的な告白にくらくらした。

本当に彼は志遠さんだろうか。彼の皮をかぶった詐欺師では?

奇しくも私は生まれて初めて人を疑うことを覚えた。



志遠さんはそれだけ告げて仕事に戻り、入れ替わりでダリルが席にやってきた。

口からエクトプラズムでも出しそうな私を見て、ダリルは顔をしかめる。

「シオンとずいぶん親しげに話されてましたけど、どういうお話を?」

「私にもさっぱり……」

「……は?」

うまく答えられず――いや、言ってもわかってもらえないだろうとあきらめて説明を放棄する。

アフタヌーンティーを食べたあと、私は観光をやめて早々に志遠さんの自宅に戻った。

というのも、志遠さんが去り際に、目を疑いそうになるほど照れた顔をして『君がダリルと一緒にいると思うと、仕事が手につかない』とむくれたのだ。

私は直感的にまずいと悟り、ダリルに『ちょっと疲れたので家で休ませてください』とお願いした。

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